花の便りが聞こえ出すと、みずみずしい丹沢が無性に恋しくなる。すっかり雪も融けた鮮烈な流れが白い花崗岩に砕け散る。釣り人でなくても心躍る時期だ。このすがすがしさに会いたくて、魚止橋〜早戸大滝〜大滝新道〜P1550〜鬼ヶ岩〜蛭ヶ岳〜榛ノ木丸〜伝道〜魚止橋の周回ルートに決めた。私にとってちょっと長い手強いコースでおまけに夕方には雨が降るという天気予報だ。ここは少しでも早い行動で4時に自宅を出た。5:40魚止橋を出発する。川の水量はだいぶ多い。早戸川の下流ではヤマブキが満開だったが、ここからはまだこれからだ。そのかわり山桜が山の斜面の所々をピンクに染めるのがなんとも美しい。普段は木々に隠れて見えない滝に会えるのもこの時期ならではだ。いつものように伝道から山道を右に入る。小さい沢を越えて、テープがあちこちにあるがここは一番下流にあるテープを頼りに小さな尾根に乗ると、あとははっきりとした登山道になる。程なく造林小屋で、ここで榛ノ木丸からの下山口を確認し更に登山道を進む。ロープの掛かった所で河原に出ると一つ目の渡渉点の木橋が流されていた。右の大岩を高巻いてみようとしたがここは無理。しかたなくなんとか渡れそうな石を探してジャンプ、その後もう一度木橋を渡渉して雷平だ。ここから早戸大滝へは進路を左にとり、2本橋を渡って大滝沢に入る。赤テを見落とさない様に何度か沢を渡渉し、本谷沢との二股を左の大滝沢にとって、右岸を詰めれば早戸大滝の3段目の滝つぼだ。ここからは少し怖い思いをして、トラロープを頼りに滝の落ち口まで登る。目指す大滝新道は左岸のすぐ上に下がっている長いトラロープから入る。初めはなんの手がかりもないザレたトヨ状で、腕力勝負だ。途中できつくなり右の尾根に乗るが、ここも岩がもろくあやうい手がかりだ。手足を使ってやっとの思いで少し傾斜がゆるんだ所まで這い上がる。ここから左の尾根に入って、アセビの花の中をやっと足だけで登れるようになる。しばらく行くと傾斜もゆるくなり、気持ちのいい笹原とシロヤシオの木だろうか?それとブナの広い尾根になる。コバイケイソウやマルバダケブキの若葉が生えだしてきている。これがP1550まで続いていく。10:10休憩舎に到着。ここから不動ノ峰、棚沢ノ頭、鬼ヶ岩を経て、蛭ヶ岳までの気持ちのいいアップダウンが続く。富士山も大きく、枯れた笹原の中にはキクザキイチゲも咲き出した。11:30丹沢最高峰、蛭ヶ岳に到着。富士山、南ア、八ヶ岳とまだまだ雪を被った峰々の大展望に息を呑む。大倉からピストンの人、檜洞丸、姫次、市原新道からの人と、四方に登山道を延ばした交差点だ。山頂でのんびりとして姫次への下山だ。山頂直下はだいぶ荒れた登山道で、しばらく下ると木道に変わる。木道が終わるとゆるい登り返しの後に、地蔵平、原小屋平をのんびり進み、なんでこんなに登るのな登山道を登れば姫次だ。蛭ヶ岳を名残惜しく眺めて、P1433のすぐ先右手に榛ノ木丸の下山口の看板を見つける。しっかりした踏み跡と赤テで迷うことはない。P1320を登り返し、ゆるい登り返しを過ぎ、進路を少し東に修正した先のピークが榛ノ木丸だ。山頂から進路は南に変わり、尾根通しに下る。鹿柵をくぐってさらに進み1000m地点でやや東に向かって、程なく造林小屋の鹿柵にたどり着く。後は朝の登山道を魚止橋まで戻っていった。
|