[2日目] 9/17（月）晴れのち曇り一時雨（強風）
２日目の夜が明けようとしている。夜半に降っていた雨も明け方には止んだようだ。あたりは夜明けの舞台が繰り広げられようとしている。群青色から茜色、黄金色、青色とあらゆるライトが山や空を照らし、朝の訪れを静かに荘厳に伝える。この一瞬の舞台の輝きに山の朝の醍醐味が凝縮されている。富士もまた、夜明けとともに舞台中央からせり上がってきた。すべての役者がそろったところで、朝の短い舞台は終わりを告げる。今日の行程もきびしい。心して出発する。キレット小屋から尾根に出たところで、なつかしい阿弥陀南稜がその姿を現した。くっきりと凛々しくそびえる山頂にあとで行くよと告げる。赤岳を見上げると、いったいどこを人間が歩けるのだという所を団体さんが下山中だ。恐ろしく急登だ。岩場に入った所でにわかに風が強くなってくる。ときどきすごい突風が訪れるので、その度に耐風姿勢をとって岩にしがみつく。一瞬お腹に回った風がふわっと身体を押し上げる。なんとも恐ろしかった。ここが山頂と思ったところはまだまだ前衛峰で、梯子を登って霧雨の中をトラバース道に入る。さらに登り竜頭峰の分岐に出るが、あまりの強風の為ここで赤岳登頂は断念しようと決めた。巻き道を文三郎尾根の分岐までしばらく行くと、こちらは幾分風が弱い。この程度の風ならば行けると判断しザックをデポして山頂を目指す。鎖の上りも初めて登ったときには恐いなあと感じたものだが、もう大分慣れてしまったようだ。一登りでたどりついた山頂はやはり強風だった。写真を撮り、直下の風が防げるところに下って少しお腹に入れる。朝がっつり食べられないのでぽちぽち食べるくせがついてしまった。こんな天気でも少しずつ登山者が登ってくる。お互いなぐさめあいながら下山する。分岐まで戻りザレた登山道を下る。もう危険箇所はないなと油断していたら、２度もすべってしりもちをついた。危ない危ない気を引き締めてかからねば。夏ならばコマクサやチシマギキョウ、イワツメグサなどが咲く広やかな尾根だが、今日は霧雨の中を淡々と歩く。中岳の山頂の遭難碑で心で手を合わせる。前に来たときはうるさいほどイワツバメが舞っていたが、きょうはしんと静まり返った山頂だった。すぐに阿弥陀岳とのコルまで下る。こちらからの阿弥陀岳への登りは私は初めてだ。しばらくいくと２００５年にはなかった梯子が出来ていた。二本目の梯子がなんととぼけたゆるい梯子で、立つにはちょっとアクロバット。で手を使うとほぼ平なので前回りしそう。今回一番笑ったとこでした。それでもラクしそうなもろい岩場なので慎重に行くが、危険箇所は鎖が付いているので安心だ。が、こんな脆い危険箇所なのになんで鎖がないんだろうと不思議に思いながら登っていると、なんとガスで道をロストしていて変な所を登っていた。ガスっている時は注意が必要ですね。まったく展望の利かない山頂にたどり着き、昼食にする。阿弥陀南稜に行きたいと言っていた男性とひとしきり話をし、御小屋尾根の下りに取り掛かる。梯子場を越え、いよいよ滑りやすい長い下りが始まります。ここが一番いやなとこかもしれない足に来るところです。樹林帯に入った所でやっと一安心。もうしばらく岩交じりの急坂を下ると、マツムシソウやアザミの咲く御小屋尾根らしい静かなゆるい尾根道に入り心が和みます。御小屋山の分岐を左に入ると、またまたすてきなカラマツ林に変わる。もう飽きたと思う頃舟山十字路にたどり着きました。 |
